ラテン語のinsula maiorに由来する、スペインの離島マヨルカ。
その意味は、大きな島。
マヨルカ島が所属しているバレアレス諸島の中で、最も大きな島です。
その面積3,640.11㎢。日本で言うと奈良県と同じくらいの広さの島に、夏のバケーションシーズンには島民の3倍近くの観光客が押し寄せるヨーロッパ屈指のリゾートです。
地中海の宝石と謳われるこの美しい島は、トラムンタナ山脈が文化的景観としてユネスコの世界遺産に登録されるなど、海岸の美しさだけでなく、その自然の美しさも高く評価されています。
地中海航路の拠点として、古くから交易の盛んな土地として賑わいを見せていたマヨルカ島ですが、その地理の良さから様々な国からの攻撃と侵略を受けてきました。
島の長い歴史の中、様々な交じり合った文化が生まれ、多様な文化と伝統が今もなお脈々と受け継がれています。
その溶け合った文化の中にも、先史時代より続くマヨルカ独自の文化と民族性を垣間見ることができる、地中海の雰囲気を色濃く感じる島がマヨルカ島です。
現在はビーチ観光が盛んで主都パルマを中心に、その歴史的雰囲気が薄れつつありますが、都心を離れると広がる広大な農園や美しい島の自然が、島本来の姿を支えるのは農業と畜産業であることを思い出させてくれます。
トラムンタナ山脈の麓に広がるオリーブやブドウ農園、島全体に広がる小麦畑、そしてアーモンドや果実の木々。
広い農園に放牧された羊や山羊、島民の食を支えるマヨルカ原産の豚。
島独特の大地と地中海気候、降り注ぐ太陽が生んだ、凝縮された豊かな味の農産物たち。
島本来の魅力は、観光客で溢れかえる都心やビーチにはなく、この島の自然の中で生きる人々にあるのではないでしょうか?
19世紀、マヨルカ島の輸出品の90%を占めていたのはオリーブ。今でも多くのオリーブやブドウが生産されています。
しかし、スペイン本土や世界的に見てもオリーブオイルやワインの生産量は低く、スペイン国内で初めて生産が始められたアーモンドでさえ、国内生産量の5位以下となっています。
マヨルカの製品は良質。しかしその生産量には限りがあるので、国外に出回ることは稀。
品質が高く評価される中、島で暮らす人以外の手には入らない希少なものになっているのが現実です。
マヨルカの自然の中で生まれた特産品
美しい自然と力強い大地、地中海の太陽が生んだマヨルカの特産品の一部をご紹介いたします。
マヨルカの食文化の根底を支える豚
マヨルカの食文化を語る上で最も重要なものは豚。
現在でも各家庭で毎年、豚を屠殺が行われ保存食が作られています。
このマタンサスと呼ばれる豚の屠殺は、先史時代から脈々と受け継がれてきた島の伝統で、冬の一番寒い月に行われます。
つらい農作業が終った後のお祝いとしての側面もあり、収穫物のない冬に備えて島民が編み出したのがソブラサダやポルトゥルなどの保存食でした。
13世紀以前より栽培されていたオリーブ
マヨルカのオリーブ栽培の歴史は、ローマ人がオリーブの木をマヨルカに持ち込んだことに始まり、栽培の記録は13世紀のものが残されています。
オリーブは地中海気候が最も適した樹木の一つで、マヨルカ島でも全土で栽培されています。
収穫を終え搾りたてのオリーブオイルができるのが11月。フレッシュオリーブの極上のアロマとフルーティなその味わいは、地中海地方の中でも、最も優れた製品の一つに数えられます。
マヨルカの穏やかな潮風が作り出す塩
マヨルカの穏やかな潮風、豊富な太陽、低い湿度は塩の生産に最も適した環境です。
塩の生産は現在でも手作業で行われ、そのプロセスは昔ながらの伝統を守り、天然塩にこだわって生産されています。
このマヨルカの塩の特徴は、80種類以上のミネラルが含まれ、通常の塩より塩化ナトリウムの含有量が少なく、マグネシウムに至っては16~20倍も高いことがあげられます。
フレーバーのバラエティも豊富で、料理に合わせそれぞれの香りと味を楽しむことができます。
100種の品種栽培を誇るアーモンド
このサイトで何度もお伝えしているので、うるさく感じてしまうかと思いますが(笑)、マヨルカでは100種の品種のアーモンドが栽培されています。
その甘さと強い芳香もさることながら、栄養価の面でも他には類を見ない特性があります。
しかしながら、生産量も少なく島内で消費されるのにも十分な量とはいえません。
素晴らしいクオリティを誇りながらも、世に知られることが少ないマヨルカ生産品の中のトップと言っても過言ではありません。
マヨルカの原種を大切に作られたワイン
大規模で現代科学を駆使したワイン生産が盛んになる中、マヨルカでは代々受け継がれている農法と製法を守る小さなワイナリーが数多く残っています。
ブラックマントル・マントネグロ・カレット・プレサムホワイトなど、マヨルカ固有種を使ってのワイン製造を中心にマヨルカならではの味わいを作り上げています。
生産量が少なく、日本に入るワインは少数で入手困難なもののひとつです。
マヨルカ島の伝統文化を垣間見れる工芸
様々な文化とが融合し、島民の生活に根差した知恵によって生まれたマヨルカの伝統工芸。今も受け継がれる伝統工芸の一部をご紹介します。
マヨルカのみで生産され続けているIKAT
古くはアジアで生産が始められ、ヨーロッパ各地で生産されていたIKATという技術を使った布。
現在ではマヨルカの3つの工房でのみ生産され続けています。
さらにはその中の一つの工房では、昔ながらの製法で70㎝幅の小型織機を使用して織られています。
そんな伝統の技法を今に伝えている布、Roba de Llengües。マヨルカ特有の美しい色彩で今も紡がれています。
マヨルカの家庭で愛用され続けているキャセロール
マヨルカの家庭では、料理の際にgreixoneresという島特有のキャセロールがよく使われています。
陶磁器も島の歴史を語る上で重要な工芸品と言えます。
素焼きにすると少し白っぽくなるのが、マヨルカの土の特徴です。
食器類だけではなく、siurelという白をベースに赤と緑で装飾された笛の置物も、素朴で味わいのある島の工芸品の一つです。
マヨルカ女性の必需品かごバッグ
マヨルカ女性なら必ず持っているのがsenallesという、アフリカハネガヤやラタンを使用したかごバッグです。
その技術は、バッグや帽子などだけでなくインテリアにも応用され、暑い夏を涼やかに演出します。
村々で開かれる青空市でも、その実演を見ることができます。
世界一美しい人工真珠
人工真珠の技術は、マヨルカでも比較的新しく取り入れられた技術で、世界一美しい人工真珠マジョリカパールとして世に知られています。
汗などによる劣化が少ないこと、傷がつきにくいことから、ビーチでも気軽に付けられるアイテムとして人気を博しています。
通常の人工パールとは異なる、美しい光沢が特徴です。
この他にも、ホテルのスイートやレストランで使用されている吹きガラス工芸や、CAMPER、Barrats、Lotusseなど多くのブランドの拠点もマヨルカに置かれています。
マヨルカの村々には、それぞれの文化があり特色があります。
観光の発展で失われかけた都心や海岸線の本来の美しさとは異なる風景も、島の内陸部や喧騒を離れた土地ではまだかろうじてその魅力的なスタイルを保っています。
マヨルカの伝統と文化は、その村々に生きている人々の日々の生活の中で淡々と繰り返されています。
それは決して特別なものではなく、生活に根付いた形として受け継がれているのです。
マヨルカ島のことはこちらで